セントノア病院

こころのこもった医療と介護を実践し、患者様の「安全の場」づくりに全力で取り組んでいます。
川越セントノア病院 春日部セントノア病院
  • 2016年12月1日 『介護保険の危機』

    ご存知ないとは思いますが、当院は開院後、川越セントノア病院が四年ほど、春日部セントノア病院が一年ほどの間、病院であるにもかかわらず、診療報酬は介護保険を選択していた時期がありました。

    というのも今から十五年ほど前になりますか、私が認知症患者のための専門病院を設立したい、と埼玉県に相談したところ、これまでに病院で全館認知症専門という病院はなく、まだ法律もよく整備されていないということで、設立した後は医療保険ではなく、とりあえず介護保険で開設したらどうか、という話が厚労省からあったからなのです。

    十五年前ですから介護保険もまだ始まったばかり、しかも、まだ介護保険にはいくつかの法律上の不備(この不備は後述します)があると思っていましたから、それに目をつぶって見切り発車をしなければならない理由は何だったのか…。そうなのです。多分その理由は、この国の医療保険制度の財政難にあったと思われます。何しろ未曽有の高齢化に伴い、今や高齢者(七十五歳以上)が使う医療費は医療保険制度を食い尽くす勢いなのですから。

    それほどひっ迫している医療保険。一日も早く介護保険を導入しなければ、医療保険制度そのものが崩壊するかも知れない危機にあったのです。そんな国の事情は私にも十分理解できます。が、しかし不備がある介護保険を選択することには、私としても少なからず抵抗を感じてしまいます。でも、でもですよ、こちらは県や国から開設の許可を頂く立場です。そうしろと言われれば、かしこまって受けざるを得ません。という事で、しばらくの間、介護保険を選択することにしたのです。

    ところが三年も経ったある日のこと、県から介護保険を選択している病院施設という事で、監査があるという通知が来たのです。もちろん当院は監査を受けるような事は何一つしていません。何に対する監査なのかも皆目見当もつきませんでしたが、ともかく監査の当日を迎えました。監査の詳細は省きますが、監査の内容はそれはそれは酷いものでした。席に着くなり『我々はこの病院の監査に来てやっている。正直に包み隠さず話せ』とまるでテレビの刑事ドラマでよく見る取調べ室さながらの威圧的な態度でした。さすがの私も我慢できずに厚労省に直訴。厚労省立ち合いの上での再監査で何とか事は丸く収めてもらいましたけど。

    そんなこんなで介護保険にはほとほと嫌気がさし、翌年には医療保険に切り替えたのです。

    その後は介護保険には特別な興味もなく、両病院を運営してきましたが、先月、安倍さんが政府の未来投資会議で介護保険制度について『介護を必要とする人の自立支援を中心にした制度への転換を進める』と表明したと聞き、この国のトップがこのことに言及したということにまずびっくり。何故ならばこれこそが介護保険の不備だと私が言い続けてきた事項だったからなのです。

    病院や施設の看護師や介護士は、高齢者の衰えた身体機能の回復や向上を目指しながら看護・介護を行っています。しかし現状では身体機能が悪化すればするほど介護度が高くなり、比例して報酬が高くなるシステムです。経営的に考えれば、何もやらせない、何もしないことがいずれ介護度が上がり、一番儲かるということになるのです。これではいくら自立支援をと言っても糠に釘です。

    もう一つあります。介護度を認定するケアマネージャーを病院や施設、介護所から独立させなかったこと。そして病院は別として施設や介護所を民間にも開放したことです。民間企業は利益を上げることを最優先に考えます。儲からなければやりませんし、利益が少なければ少しでも利益を多くしようとし、顧客(この場合は被保険者)を増やそうとします。つまり高齢である被保険者にこれでもかというくらいサービスを勧めます。自立支援の真逆を行くわけです。その昔、病院で医療と称して高齢者に点滴漬け、検査漬けをし、寝たきり老人を作り出していたあの悪夢を思い出してしまいます。

     

    ともかく一国の総理が『介護を必要とする人の自立支援』を言い出したことは、今後の介護保険制度の在り方を大きく変える第一歩となる筈です。惜しむらくはこの言葉を十五年前に聞きたかったですけどね…。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋


  • 2016年11月1日 『精神保健指定医』
    当院は科目分類上、精神科の病院です。従って川越・春日部、どちらの病院にも『精神保健指定医』は常勤として在籍しています。
    厚労省の調べでは、精神科などで働く医師は全国で1万6千人ほどいるそうですが、そのうち『精神保健指定医』の資格を持っているのは1万4700人、全体の約92%だそうなので、精神科医にとってはごく一般的な資格なのかもしれません。
    その一般的な『精神保健指定医』の資格取得を巡って不正が行われていたという事件が、昨年聖マリアンナ医科大学病院で発覚しました。この不正取得事件により、上司の指導医を含め、医師23人が厚労省より資格取り消し処分を受けたのは記憶に新しいところです。
    さらに厚労省は、この聖マリアンナ医科大学病院の不正取得事件を問題視し、昨年から全国調査に乗り出しました。調査の内容は、09年1月から15年7月までに申請された症例のうち3374人の症例報告3万件をデータベース化し、重複する症例を洗い出し、その症例報告を提出した98人から聴聞を行ったというものです。
    そしてその結果、今年10月。厚労省は『精神保健指定医』の資格を不正に取得したとして、過去最多の医師89人の資格を取り消す行政処分を行いました。
    その内容たるや、京都府立医大病院・愛知医大病院・兵庫医大病院などなど、実に12都道府県にわたり、自主返上を含めれば総勢95人の処分になったといいます。
    また、処分のもととなった不正の内容を見ると、資格審査に必要な症例報告で自身が診療に十分かかわっていない患者を、さも自身の症例のように報告していたという医師49人と、そんな症例報告の内容を十分確認せず、証明を示す書類に署名した上司の指導医40人。そして後の6人は処分が出る前に資格を自主返上したそうな。
    では、この『精神保健指定医』の資格とはどんな資格なのか、そしてこの資格を持つことによって、何ができるのかを記してみます。まず「措置入院」を決める権限を持ちます。この「措置入院」とは、精神保健福祉法によって精神障害で自傷(自分で自身を傷つけること)、または他傷他害(他人に傷害を与えること)の恐れがある患者を『強制的に入院させる』ことができる措置をいいます。この権限は事と次第によっては患者の人権問題にすらなりかねない権限でもあります。
    その他にも指定医にしか認められていない医療行為も多くあり、病院にとっても、例えば外来で精神療法を受ける場合の初診料などは内科等の一般医師に比べ、1.5倍の診療報酬が得られるなど、経営上の利点もありますから、病院と雇用契約を結ぶ場合にも『精神保健指定医』の資格は必携となります。
    そんなこんなで、少しでも早く指定医の資格を取ることは、少しオーバーに言えば、精神科医にとって死活問題ともなるのです。ですから資格を早く取りたい気持ちは十分理解できます。
    ですが、だからと言って軽く考えてもらっては困ります。前述した措置入院のようにその人間の一生を左右してしまうような、そんな権限をも併せ持つ資格であることをしっかり認識してほしいのです。

    常務理事・事務局長 瓦井 洋


  • 2016年10月1日 『日本の医療費2』

    では、無駄な医療費の削減を目指すなら、医療現場のどこに目を向け、どんな意見を聞くべきなのでしょうか。前号では、日本の医療・介護費が世界に比してどうなのかを少しお話ししましたが、今回は国内ではどうなのかを話してみます。

    先月、厚労省が平成26年度の国民医療費を発表しました。それによると金額は初めて40兆円の大台を突破し、前年の25年よりも1・8%増えたそうです。それでも前回お話しした、経済協力開発機構(OECD)が発表した数字とは大分少なく、異なりますが、厚労省とOECDとでは統計の取り方がまるで違いますのでこんなに違った数字になったりします。ともあれ数字もですが、ここでは毎年毎年2%前後も増え続けていることが重要で、一人当たりにすると31万4千円にもなります。

    それでは各都道府県別の一人当たりの医療費はどうなっているのでしょう。

    都道府県別の多い順に挙げてみましょうか。

    @高知県37・9万円
    A福岡県36・7万円
    B北海道36・0万円
    C大分県35・7万円
    D長崎県35・4万円 

    少ない順は

    @埼玉県24・8万円
    A千葉県26・2万円
    B茨城県26・3万円
    C神奈川県27・1万円
    D滋賀県27・5万円

    こう見ると、高齢化の顕著な地方が医療費は高く、逆に比較的若い世代の多い東京近郊では、少ないという傾向にあります。さらに全国平均で見れば、75歳未満は21万円ですが、75歳以上では93万1千円と4倍以上に跳ね上がります。

    OECDに言われるまでもなく、GDPの11%を超える医療費はこの国にとって大きな懸念材料ですが、もはやこの国の超高齢化は止める術もなく、医療費削減で早急に対応出来そうな材料は医薬品のみだと思われます。厚労省は、相も変わらず入院日数に制限を設けたり、病院や施設に頼らずに在宅での看護・介護をするよう推奨していますけどね。

    実は前述の医薬品支出は医療費の20%近くも占めており、その費用は8兆円にもなろうとしています。

    しかもこの医薬品支出も毎年5%余りも増加しており、OECDからもジェネリック医薬品の比率を高めるよう提案を受けているはずなのです。

    ジェネリック医薬品というと、どうしても2級品というイメージがありますが、これは大きな誤解です。

    ジェネリックは開発した会社の特許が切れて、(現在の期限は特許出願後20年。TPPでの米国との交渉で10年に短縮する話がついていますが)ほかの製薬会社も同じ有効成分で作ることができるようになった医薬品のことをいい、価格は先発品の半分以下になるのが殆どです。つまり製品に開発費用の上乗せがなくなるのですから安くなって当然です。

    医師がジェネリックを処方し、皆さんがそれを拒否しない限り、毎年の医薬品費はかなりの金額が削減されるはずです。ちなみに現在のジェネリック使用率はまだ50%そこそこです。まだまだ削減の余地は十分あるのです。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋

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