セントノア病院

こころのこもった医療と介護を実践し、患者様の「安全の場」づくりに全力で取り組んでいます。
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  • 2017年9月1日 『終末期医療2』

    終末期医療については、医師をはじめ医療関係者の間でもいろいろな意見があることは前号でも述べました。そんな終末期医療。実に不思議なのですが、最も高い関心を持っているのが医療関係者ではなく厚労省だったなんて言ったら皆さんは信じるでしょうか。こんな話、ジョークにもなりませんよね。

    近年、際限なく膨れ上がっていく国民医療費。その一翼を担っているのが終末期医療だと言われていますから、厚労省も無関心ではいられません。それに大命題となっている国民医療費の削減からすれば、病院での終末期の医療費はかなり頭の痛い問題のはずですから…。

    それでも泣く子も黙る厚労省でさえ、終末期医療にはなかなか手を出すことが出来ません。ここでも前号で書きました『生命の尊厳』が顔を出すからです。日本人は本当にこの言葉に弱いんですね。

    という事で、遅ればせながら厚労省も、今秋から自治体や病院などと患者の意思を共有する仕組み作りに乗り出すそうです。つまり自宅で最期を迎えたい?と考える「終末期の患者の意思に沿った医療を提供」するために、「延命治療を望むかどうか」などという情報を救急医や在宅医らの間で共有する方法などを検討するという事らしいのです。

    これは厚労省の2015年度の統計ですが、自宅で死亡した人の割合は12.7%だったのに対し病院は74.6%だったとか。この数字が示すように、確かに病院での終末期医療は、超高齢化社会に突入して以来、厚労省の目の上のたん瘤なのは良く分かります。しかし、病院で亡くなるにはそれなりの理由がある筈です。以下は私見ですが、

    昭和から平成へ近代国家を目指したこの国は、現在、好むと好まざるとに拘わらず超高齢化と同時に核家族化もどんどん進んでいます。と同時に大都会一極集中型の人口形成になり、これがこの国の社会現象ともなっています。そんな時代での在宅医療や在宅での看取り。これを強力に推進している厚労省。私は在宅の医療や在宅での看取りが1〜2日で終わるならまだしも、これが数週間、数か月、数年にわたった場合のご家族の疲労や心労は計り知れないものだと十分承知しています。特に認知症患者においてはなおさらです。厚労省が進める在宅での医療と看取り。私にはどうにも無理に思えてなりません。とはいえ、医療において、しかも終末期においては、延命治療の在り方など患者や家族の意思がより尊重されるべき、という厚労省の考え方には賛成します。

    もっとも厚労省の本音は、病院で行われている終末期医療には、患者本人や家族の意思に必ずしも沿わない医療が行われている実態がある。これが医療費を押し上げている一因でもある。だから…というのが本当らしいのです。

    いずれにしても終末期医療の在り方については、患者や家族が医師らと十分話し合い、納得したうえで本人が決めることが重要なことは言うまでもありません。

    もちろんそんな患者の相談に、適切に対応できる医師や看護師の養成も大事ですけど…。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年8月1日 『終末期医療』

    「スパゲッティ症候群」。この言葉、ご存じでしょうか。病院や医療関係者の間でこの言葉が囁かれるようになったのはもうかなり前になります。

    人生の最後を迎える時、その時に行われる医療を終末期医療と言います。(最近では厚労省が別の呼び方を推奨しています)が、この終末期医療、厚労省の言う通りで相変わらず「医学中心」から抜け切れていないのが現実のようです。

    まず終末期医療を考えるうえで、真っ先に出てくる言葉が『生命の尊厳』です。どこかの首相が「人の命は地球よりも重い」と言ったことがありますが、これを言われたとたんに日本人は反論ができません。この『生命の尊厳』によって、1分1秒でも長生きさせる風潮が医療界にはびこり、延命治療は「行って当然」というのが未だに主流なのです。そして担当医師がその医療が不要になったと思っても「反論できない命の尊厳」のために医療行為を終了できない…。結果、最終段階まで様々な管につながれて死んでいく。これが「スパゲッティ症候群」の実態なのです。

    治療、救命が最上の価値と教育される日本の医学界。医師の内には人工的な延命措置をやめることは患者の命を縮めてしまう、という心理的抵抗がかなりあるのだそうです。それにもう一つ、この症候群を後押しした事由があります。それは「治療を尽くさないと外聞が悪い」と考えてしまう家族の意識です。

    さて実際に終末期として行われる医療にはどんなものがあるのでしょう。典型的なものは点滴注射による水分や栄養分の補給だと言われています。でも終末期の点滴は血管が見つからず、針を何度も刺され青黒く変色した腕や足は見ただけで痛そうです。医学的にも余分な輸液は気道内の分泌物を増やし、たんの吸引による苦痛はもちろん気道が閉塞するリスクも高く、肺や心臓への負担も大きいといいます。点滴は見た目以上に本人に与える苦痛は大きいと思われるのです。それなのに点滴はなくなりません。ある調査によれば「終末期の患者にとって医学的に必要」と答えた医師は4割にも満たなかったとか。それなのになぜ…。

    二つの病院の運営に携わる私がこんなことを言うのも変な話ですが、どうも終末期医療になると医師や看護師の医療スタッフ、そしてご家族の「治療を尽くさなければ」という双方の心理的負担が大きくなり、何もせず看取るのは看取る側としては心が痛むので、せめて「点滴ぐらいは」となるのだそうです。

    当院も『延命治療は行わない』ことを明言しています。でもご家族同様、医療スタッフも心の葛藤は避けることが出来ません。

    『延命治療は行わない』当院の理念は、終末期に必要な医療として「技術的に可能なことをやりつくす」のではなく、患者さんが穏やかに、そして安らかに最後の時を迎えられるよう、看護や介護を手厚く行うこと。そして最後までその人らしく人生を終える。そのことに医療スタッフとして手助けすること。これこそが本当の『生命の尊厳』だと思うからなのです。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年7月1日 『スマートドラッグ』

    私(昭和18年生まれ)がいたずら盛りの子供の頃、いたずらや悪さをして近所のおばさんやおじさんに叱られたとき、最後に言われたのがこの言葉でした。『やっちゃいけないって何度言ったら分かるの!まったく!馬鹿につける薬はないのかね!』。

    いいえ、今はあるんです。馬鹿につける薬が…。

    そんな薬が『スマートドラッグ』、いわゆる『スマドラ』です。1990年代に「頭がよくなる」「記憶力が向上する」などと本の中で紹介され、その後、米国で爆発的に流行した薬です。

    もちろんこういう事にはとても慎重な日本ですから、その「有効性」や「安全性」が確認されていないとして未だに承認しておりませんし、日本では製造もされていません。

    ところがこの『スマドラ』が今、中高生の間で密かに流行、蔓延しているというのですから驚きです。

    集中力を高め、なお且つ思考力や記憶力を高め、しかも中高生でも安易に買える値段(個人輸入)となれば、それこそ一石三鳥どころか四鳥ですから、日々勉強に追われる中高生には、神様の贈り物にも思えるのかもしれません。

    この『スマドラ』、脳の機能に作用し、思考力や記憶力にもかかわるアセチルコリンを増大させる効力があるそうで、「てんかん」や「認知症」の治療薬にも使われているそうです。

    つまり、他の病気に使用されている薬の一部分の効力を利用しているとも言えるのです。

    そんな『スマドラ』の規制にやっと厚労省が乗り出しました。先月22日に開かれた同省の部会で、健康被害や乱用に繋がる恐れのある医薬品が個人輸入され、出回っている可能性があるとの報告を受け、危険性の高い薬の個人輸入を原則禁止するということを確認したというのです。

    『スマドラ』の国内に出回っている種類や健康被害の実態は、正確にはまだ分かっていないそうですが、健康な若者らが勉強や仕事の効率を上げたい、と本来の目的からは外れて使うケースがある、と問題視されたわけです。この日の部会で同省は輸入されている薬をインターネットなどで調べ、医学界や同団体から意見を聞くと説明、健康被害や依存症につながる恐れがある場合には医師の処方箋や指示がなければ個人輸入を認めないという方針を示しました。

    どんな薬であれ副作用のない薬は一つもないのが医療界の常識ですが、この『スマドラ』の副作用については、使用した一部の高校生から「集中力や思考力が高まる」や「眠気が来ない」との意見もある一方で「薬が切れるとイライラする」などの、まるで覚せい剤使用者みたいな感想も聞かれるといいますから本当に怖いです。

    若者よ、勉強や仕事の効率を上げるために安易な方法を取ってはいけません。勉強をすること、仕事をすることに人生の意義があるのですから。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

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