春日部セントノア病院

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2014年6月
『無知を知る、憲法の話』

憲法の最大の意味は何か。恥ずかしながら僕は最近まで知らなかった。憲法は国民を縛るのではなく、政治家や公務員らの行動を縛るためにある、という事だ。日本国憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とある。なぜ国家を縛るルールが必要か?ときに国家権力が暴走して私達の生活を脅かすことがあるからだ。国家が好き勝手に法律を作ってよければ税金は取り放題、気に食わない人は逮捕し放題になる。それを防ぐために憲法によって国家を縛りつけておく。国民主権や基本的人権を、国家権力から守るのが憲法だ。 
国の構成を国家と市民(個人)から成ると考えると、国家という組織は、概して、首相や大統領、各省庁大臣・長官、国会議員、官僚その他の公務員からなる。その国家と個人について、憲法は「国家が暴走しないように国家が守るべきルール」、法律は「市民が勝手な事をしないように市民が守るべきルール」、と定められている。憲法と法律は違うのです。      
ところで日本国憲法は押しつけ憲法だから自主憲法を作るべきだという声がある。だが、敗戦当時の日本ではほとんど全ての憲法学者も国会議員も先進国並の民主的な憲法を作るだけの人権感覚も見識もなかった。24人のGHQ(連合軍総司令部)民政局憲法担当チーム(多くは軍人で元法律関係の職業出身)の方が彼らよりはるかに進んだ人権感覚を持ち民主主義を理解していた。彼らは当時の日本で最も進歩的な民間人が作った草案を参考に理想的な憲法を作った。基本は日本人案だ。しかも諸外国では国家権力と闘ってやっと得たのに日本では何の犠牲もなしに手に入れたため、その有難みがわからない。例えば男女平等の条項(14条、24条)はアメリカの憲法にはない。今の日本で多くの国会議員の人権感覚は当時の民政局チームの水準にさえ到底及ばないだろう。押しつけではなく当時日本で最も先進的な人達の考えを基に、さらに理想的に仕上げられたのです。
そんな憲法を市民のほとんどが知らず、国会議員でさえろくに理解できていないのに変えるなど笑止千万だ。ましてや憲法改正条件を変更するなど論外です。与党の国会議員が多数を占めたからと勝手に改正条件を変えるのは憲法違反でしょう。小林節慶大教授ら多くの憲法改正論者でさえ改正条件緩和には反対している。諸外国でも改正条件は日本より厳しい国が多い。アメリカも日本より厳しいが日本国憲法制定後すでに6回も憲法を改正している。アメリカでデモ隊を警官隊が抑えようとすると、普通の市民が「ファースト・アメンドメント」と叫ぶ。ファースト・アメンドメントとはアメリカ合衆国憲法修正第一条で、これには言論・出版・集会の自由が謳われている。つまり自分たちの憲法の権利というものが浸透している。日本では戦後まもなく教師の政治的中立性が保てないからと学校での政治教育を事実上禁止したが、政治的に中立な人などいない。誰でも多少は左か右に偏っている。だからこそ日常の社会問題を各自が考え、より正当な判断をめざす議論が必要で、それが政治の基本です。その議論を教えず学ばずにきた結果、何も考えず政府に簡単にだまされる国民、議論もできぬ国会議員、本当に重要な情報を流さないマスコミを生み、まともな政党はできなかった。欧米を失望させた歴史観、歴代自民党が堅持してきた方針を無視し稚拙な論理で変えようとする集団的自衛権問題など政府の無知ぶりが目立つが、これではTPP交渉でも医療制度を守れるかどうか。戦争経験者ら多くの先輩方が考え抜いて得た結論は軍隊で日本は守れないという事です。経済的(防衛費)・人的・地理的条件(海岸線の長さ等)を考えれば中高生でもわかる。各市民が政治や憲法を十分理解するまで憲法改正は待つべきでしょう。

医師 沢田 實