春日部セントノア病院

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2015年2月

『その人らしい「いのち」をサポートする』

 

お母さん

あなたが倒れてから1年6ヶ月

やっと 車イス生活に慣れ始めたようですね

これからは もうずーっと車イス そして他人の手を借りて生きていく

この生活をやっと全身で受け入れられたのですね

今までは

私があなたを食堂のテーブルまで送ったり ベッドまで送ったりしてから帰ってきていました

この前からは あなたが私をエレベーター前まで送り

ドアが閉まるまで見届けてくれます

気を付けてねと言って

その後で あなたは 左手で車イスをこいで食堂へ行くのですね

施設での生活に慣れてきたお母さん

嬉しいはずなのに 涙があふれ出ました

これは野陽子さんの詩集『母へ』の中の一篇です。(注:野陽子は私の妻です)

2年半前、義母は脳梗塞で倒れました。右片麻痺が残り、現在近隣の老健に入所しています。最初に入った老健は街なかにあって、自然の風景はいっさい見られませんでした。空調がきいていますので、施設内に季節感はありません。自然の日が入らないため、空気は何となくよどみ、陰気な感じが私にはしました。人工の光はいくら明るくしても、太陽の光のぬくもりをかもし出すことは出来ません。食欲が無くなり、個室に入り点滴を受ける毎日になりました。次第に衰え、幻覚が出てきたのです。

少し食べられるようになった時機に、郊外の老健に移りました。田園の中にあって、遠くには富士山も見えます。車イスで外を散歩すれば、田植えや稲刈りを目の当たりにすることが出来ます。そばに小学校があり、元気に叫ぶ子供たちの声が聞こえて来ます。日増しに元気を取り戻しました。今では介護タクシーを使って、公園に行ったり、外食したり、時折りわが家を訪れるまでになりました。

義母の娘(私の妻)は、昨年暮に、長年書きとめていたものをまとめ、手書きの詩集を『母へ』と題して出しました。それを、施設のケアマネージャーさんやスタッフの皆さんに送ったのです。ご返事をいただきました。お礼の言葉が添えられていました。

「私たちはこれほどまでに大切にされている方々をお世話しているのだと教えられ、介護の原点をあらためて思い起こしました」

すべての人がそうであるように、患者さんやその家族には、それぞれの人生の中で刻まれた特別な想いがあるのです。その想いを大切にして、その人らしい「いのち」をまっとうされるようサポートするのが、ホスピスケアの要点の1つだと思っています。

認知症は、糖尿病やがんなどの患者数を上回るほどに年々増加し、政府は1月27日、国を挙げて認知症の施策を推進する「新オレンジプラン」を発表しています。

10年目の2015年、当院の社会的使命が認知症のホスピスケアにあることを再認識して、心新たに歩もうと思っています。

 


副院長 野 正孝