春日部セントノア病院

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2015年3月

『身体拘束をしない認知症の治療』

 

ひと月程前、川越セントノア病院の精神科の山先生にお会いする機会がありました。その際、山先生は「私は認知症の治療を30年やってきましたが、拘束をしないで認知症の患者さんを治療することは無理だと思っていました。だけどセントノア病院に着任して、身体拘束をされていない現場を見ると、患者さんの表情が皆さん穏やかなんです。」とおっしゃっていました。また、同窓会で会った精神科病院の院長は、「認知症病棟で拘束をしないことは理想だが、残念ながらうちの病院でも身体拘束はなくせません。」とおっしゃっていました。このように精神科医としてベテランの先生方にしても、認知症の病院で拘束をしないで治療するということは大変難しいことです。

一般病院に入院して、治療上やむなく拘束を受ける理由としては、「点滴を抜く」「医療を拒否する」「病棟内を歩き回り他の患者さんの医療機器に触る」などが挙げられます。そして、精神科の病院でも、「歩行が不安定なのに歩き回る」「不潔行為がある」「他の患者さんに迷惑をかける行為がある」などで拘束を受けます。こういった様々な症状のために継続治療を必要とされている方々が当院に入院されます。施設からの場合は、入所中に医療行為が合併する、又は暴力や徘徊で他利用者さんとトラブルが多い方が紹介されて来ます。また、在宅で暮らしていた方は、患者さんの暴力行為や徘徊のため在宅介護の限界で入院に至ります。

このように、認知症の患者さんは様々な『問題行動』を持っているので、精神科医の立場としてはどう治療するかということが重要です。治療にあたっては身体疾患がどれだけ深刻か、認知症の程度、判断力、精神症状はどうか、苛立っている原因は何なのか、飲んでいる薬の影響はないか、などなど考えながら、薬を減らしたり、変更したりして患者さんの変化を見ています。それは精神薬の使い方も拘束の一つととらえ、慎重に調整したいと考えるからです。また、出来るだけ早く新しい環境に馴染んでもらいたい、という思いから、患者さんの話には毎日耳を傾けています。このような治療を優先していますので、精神科医の立場から拘束は出来ないのです。

もう一つ、当院が他の病院と大きく違うことは、看護や介護をしている職員が精神科医に身体拘束をして欲しいと要求して来ないことです。精神科病院では、身体拘束は唯一精神科医の権限として認められているので、認知症の治療上やむを得ず身体拘束が行われることが一般的です。また、現場から身体拘束が求められることも多いのです。

『拘束をしない認知症の治療』を行うには、病院の理念として拘束をしない事を公言し、全職員で共有し、患者さんのご家族と約束する事が必要でしょう。当院の「拘束をしない治療」は、入院治療を受けた全患者さんやご家族の皆さん、及び全職員の思いと努力が後押ししてくれるから続けられていると思います。

 

精神保健指定医 佐々木 昭子