春日部セントノア病院

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2015年6月

『アメリカと日本の医療』

 

日本の医療制度は国民皆保険制度で全員が医療保険に加入し保険証があれば日本全国どこの病院・診療所のどの医師にも受診できる。支払は薬代も含め医療費総額の原則三割負担、老人は一部一割〜二割負担。また手術等の高額医療費については大幅な割引制度がある。働く人は職場で健康保険に加入し毎月の給与から健康保険料を労使折半で払う。その他は主に市町村が運営する国民健康保険に加入する。病気やケガで病院を受診すると治療費の三割を支払い、残り七割は各健康保険組合の支払基金から支払われる。単純明快な制度だ。

アメリカではオバマ大統領が二〇一〇年新医療制度(オバマケア)を導入、公的保険か民間医療保険に加入する皆保険制度になった。それまで約一億七千万人が職場で加入する民間保険が主で、約九千万人が公的保険、残り約五千万人が無保険だった。高齢者にはメディケア、低所得者層にはメディケイドという公的保険があり国と州が負担する。両保険の受給者は一定の条件下に医療費の自己負担が軽くなる。しかし、この公的保険の患者を病院がなかなか診てくれない。診療後に医療費を請求しても審査で査定され、支払率は通常の医療保険に比べ、メディケアは七〜八割、メディケイドは六割と極端に悪いからだ。民間保険加入者はその保険と契約している病院とその医師にしかかかれない。月々の保険料(年収四百万円で約三〜六万円位)と免責額(年間六千ドル(六十万円)等)が決められ、さらに診療窓口負担と薬剤自己負担が毎回かかる。免責額とは保険金が支払われるまでの自己負担額。この場合最初の六十万円までの医療費を全額支払うまで保険金はおりない。オバマケアでは医療費の自己負担の上限は設定されたが、抗癌剤やエイズ薬等の高額な薬の自己負担が四〜五割になる患者も多く、この場合上限は撤廃されるため、事実上自己負担に上限はない。また、今まで企業が従業員に提供していた安い保険は新制度の規定を満たさぬため廃止され、満たす保険は負担が重くなり、全米企業の約半数が罰金を払っても企業保険を廃止する方を選び、多くの従業員は自ら新制度の保険に入ることに。その新医療保険でも保険料支払い率はメディケイド並に低く受診は困難だという。かくてオバマの新医療制度は国民を救えず医師の請求事務負担まで重くし医療界からの離脱を促した。

日米の医療制度の違いは何か。それは医療の目的の差だ。患者の生命優先か、薬品会社や保険業界の利益優先か、の違いだ。日本では患者のために医療費も薬価も公的機関が決める。米では医療費も薬価も保険会社や薬品業界が決める。この差はあまりにも大きい。

さて、現在日米で交渉中のTPPにおける医療問題を考えてみます。どうみても医療制度の根幹でアメリカに妥協はできない。国民皆保険の現行方式は必ず守る。医療費や薬価等の適正価格は従来通り公的機関のような第三者機関が決める。その決定にアメリカの保険・薬品業界には介入させない。メディカル・ツーリズム(海外からの外国人の私費診療)等の自由診療を認めても日本人の保険診療が優先される原則は守る。病院の経営を株式会社に譲ると利益追求に走りがちですから、医療の社会奉仕的意義を理解し経営手腕のある医療事務系幹部を積極的に経営者に登用し経営を委せた方がいい。医療は本来人の生命を守るためのものであり、譲歩はほとんど不可能でしょう。

 

医師 沢田 實