春日部セントノア病院

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2017年2月

『ホスピスケアの原則 キュアとケアの並列』

世界的に見ると、「ホスピスケア(緩和ケア)=ガン患者のケア」は、もはや非常識となっています。米国では、ホスピスケアを受けた人の内訳は、第1位がガン36.5%、次いで認知症15.2%なのです(2014年)。一方わが国では、97%をガン患者が占め、非ガン患者はわずか2.5%にすぎません(2011年)。わが国のホスピスケアの施策は、だいぶ世界に遅れをとっているといえるのです。

ところでホスピスケアの原則には、@患者の尊厳を守る A症状コントロール BQOLの重視の3つがあることは、ご存じのとおりです。ホスピスケアを実践するには、ピラミッド型の急性病棟とは違って、キュア(治療)とケア(看護・介護)が並列型の体制でなければなりません。

以前、急性病棟とホスピス病棟を兼務したことがあります。多忙すぎて、両棟を完璧に管理することは不可能でした。そこでホスピス病棟では、治療の大枠を指示すると、あとはナースに任せたのです。するとどうでしょう。それまではドクターの指示を受けなければ動けなかったのに、自分たちの裁量でやれるようになったので、ナースは水を得た魚のように生き生きと仕事をするようになったのです。グッドアイデアを多数案出したのです。まさに怪我の功名でした。

またこんなこともありました。2つの病棟は異なる病棟ですから、スタッフの陣容も全く違います。ある時、ホスピス病棟で患者さんの食事を指示することがありました。スタッフに「どんな食事がいいだろうね」と尋ねると、「軟らかい方がいい」「肉より魚が好きそう」「辛目の味がいい」などなど、たくさんの意見が出ました。「あなた達に任せる」といって私は急性病棟に呼ばれて行きました。ちょうどその時、急性病棟でも同じようなことがあったのです。 高齢の患者さんで何とか食べさせてあげたいと思い、ナースに「食事はどんなものがいいだろうね」と尋ねました。すると、「それは先生が考えることですよ」という返事が帰って来たのです。ほんの十分くらいの間に起きた両棟のこの違いに、唖然としたのです。

当院に衰弱した高齢の患者さんが入院しました。まもなく熱が出て腎不全になったのです。3週間、できるだけの治療を施し、幸いにも腎不全を脱しました。「これからはケアさんたちの出番ですよ」 ケアさんの試行錯誤が始まりました。点滴を打っていますから、点滴をぶら下げたまま、車椅子に乗せてホールに出しました。3週間ベッドに寝ていた患者さんは、ホールの雰囲気に刺激されて表情がきりっと引き締まりました。ベッド上にいた時は何をあげても吐き出してしまうのに、話しかけながらゆっくりと差し出すと、飲み込んでくれるようになったのです。何が食べられるか手をかえ品をかえいろいろ工夫し、時には食堂にとんで行っておにぎりを作ってみました。間もなく点滴はなくなり、ホールでみんなと一緒に体操をやるまでに回復したのです。

 

2月で12年目に入る当院は、これからも、キュアとケア並列型のホスピスケアを目指します。

 

副院長  野 正孝