春日部セントノア病院

川越セントノア病院 総合
トップ
取り組み
施設案内
スタッフ紹介
イベント紹介
入院案内
職員募集
病院新聞
病院の沿革

病院短信

2017年7月

『帰宅願望』

西日の強さが日毎に増し、夏空がまぶしく感じられます。七月から職員全員がクールビズ姿となり、名札が付いていませんのでご家族の皆様には不都合をお掛けするかもしれませんがご容赦下さい。

認知症の患者さんが年々増加していますが、高齢者がなりたくない病気一位に「認知症」が選ばれたといいます。超高齢化社会を迎え、二〇二五年には高齢者五人に一人が認知症になると言われています。今以上に認知症の方が身近になることでしょう。

認知症看護に携わり十一年目となります。認知症の患者さんの訴えの中で、対応が難しいと感じていることは『帰宅願望』です。帰宅願望は、夕方近くになるとソワソワしはじめ「帰りたい」と訴える場合が多いとされていますが、毎朝私が出勤すると、数名の患者さんが待ち受けていたように交代で「そろそろ帰りたいのですが」「早く帰って子供の世話をしないと」と訴え、出口を探して徘徊したり、エレベーター前でドアが開くのを待っていたりします。他にも「仕事に行かないと」「ここを辞めたいのですが」など、帰りたい理由は人によって違いますが、本人は本当に帰りたいのです。それは普通の正当な要求なのだと思います。「帰りたい」と言い始めた背景には何があるのかを考えながら「帰りたいのに、帰してもらえない」という患者さんの思いに寄り添い、それぞれの患者さんに合った対応を心掛けています。

私は中学卒業後、青森から遠く離れた群馬県の看護学校へ入学、入寮しました。不安と孤独感から寂しくて実家が恋しくて、毎日のように押し入れやトイレで泣き、先輩を困らせていました。ホームシックです。十五歳の私と認知症の患者さんとでは違うかもしれませんが、患者さんにとっても住み慣れた居場所を離れ新たな場所(病院)での生活は、人間関係までもリセットされてしまうことでは同じなのだと思います。

認知症はお一人お一人の症状も性質も違います。正解はありませんので、教科書通りにやって上手く行かないこともあります。そこで、各病棟での対応が難しいケースについて意見交換を行いスタッフが統一したケアを行えるよう、院内研修会や日々のカンファレンスを行っています。対応の中で特にしてはいけないと言われている

@訴えを無視したり、叱ったりしない
A理屈で説得しようとしない
B訴えを否定しない
C「帰れない」という言葉をかけない

を常に念頭に置き、患者さんのペースや症状に合わせて対応するよう心掛けています。

『帰宅願望』は居心地が悪いことも原因の一つとされています。私たちの対応によっても起こる周辺症状とも言われています。また「鍵を開けてくれない」「電話も自由に掛けられない」などの不満や不安から寂しい・むなしいと思うようになり、居心地の悪い場所からの逃避とも言われています。大事なことは「帰りたい」と言う患者さんを無理に止めるのではなく「ここもいいね」と思えるようなケアを目指し、患者さんが笑顔で楽しく安全に過ごして頂けるよう常に努力し実践していくことです。

今年の夏は暑くて長いと聞いております。熱中症や脱水症にならないように皆さまも十分な水分と睡眠をとり、この夏を快適に切り抜けましょう!

 

1病棟看護師長  渡辺 仁美