春日部セントノア病院

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2009年10月

我が国の精神医療の新しい方向を考えるため、欧州の精神医療の現況を自分たちの目で確かめ勉強してこようという旅行に昭和50年に参加しました。東京大学の精神科医師の有志が企画し、東京・千葉・京都・大阪の若い精神科医約30人が参加しました。計画は3週間の旅行で、最も社会的精神医療が進んでいる英国、総合的施策をたて地域の組織化を着実に行っているフランス、大学に社会精神医学講座を設けて社会精神医学をすすめているドイツの3カ国の病院を見て、現場の人々から経験や意見を聞き、私たちも考えを述べ合うことで、新しい展望が開かれるのではなかろうか、というものです。そのころ私は都立墨東病院に勤め、我が国初の精神科救急医療を始める準備をしていましたが、厚生省は「精神科救急は都会の問題でしょ?」と相談に乗ってくれませんでした。精神科救急医療についてはドイツのハノーヴァー大学やマンハイム精神医療センターが実施しており、精神科救急医療の制度や急性期の激しい症状に対するカクテル療法や点滴による薬の持続投与など、実践に基づくアドバイスを頂きました。また東京は精神科病院が多摩地区に集中し東部地区は精神科病床の過疎地域ですが、パリでは郊外にある病院は病棟毎に担当地域が決まっており、退院すると患者さんは地域のディスパンセール(ごく小規模の精神科のクリニック兼精神保健の相談所のような場所)に通院したりデイケアに通ったりします。英国では治療共同体を発足させたディングルトン病院、ケンブリッジの社会治療で有名なフルボーン病院、オックスフォードのコミュニティーハウス、ヨーク市にあるクエーカー教徒のチューク父子が18世紀に設立したレトリートホスピタル等を訪問しました。チューク氏は、ヨークの社交界の花といわれた女性が精神変調をきたして収容されたがひどい扱いを受けている状況を見て、精神病者の治療病院を設立しました。私たちが訪問したときは主に高齢者が入院しており、若い精神障害者は病院のデイケアに通って来ていました。高齢者病棟を見学しましたが、病室というより居室と呼んだほうが良いような部屋で、個室・二人部屋・三人部屋には家具が置かれ、家具調のポータブルトイレが置かれていました。患者さんは私服を着て、美しいテーブル掛けの掛かったテーブルでお茶を楽しんでいました。デイルームは2千坪はあるかと思われる広い芝生の庭に面しており、ゆったりした時間が印象的でした。
あの勉強旅行から34年が経ちましたが、日本の精神保健福祉はまだ訪問国の当時の水準に達していないように思います。今回の全国精神障害者社会復帰協議会の不正経理にも精神保健福祉が未成熟であることが見て取れるように思います。

 

医師 佐々木 昭子