春日部セントノア病院

川越セントノア病院 総合
トップ
取り組み
施設案内
スタッフ紹介
イベント紹介
入院案内
職員募集
病院新聞
病院の沿革

病院短信

2011年5月

『人の一生と延命治療』

延命治療は、病気や怪我を治す治療とは違う。治る見込のない人の命を延ばす事が目的だ。十分な治療後、回復の見込もなく意思の疎通も経口摂取もできない人への人工呼吸、胃チューブ・胃瘻等の経管栄養等がある。日本の伝統的死生観では経口摂取できなくなると何もせずそのまま看取ることが当然であり、一昔前は自宅で祖父母が次第に衰弱し吸い飲みで水も取れなくなるとそのまま自然に看取っていたが、今では若干変化してきている。
病院での治療後、回復の見込がなく経口摂取も望めない患者の多くは胃瘻等による経管栄養の処置を受け次の施設へ移る。そのうち意思の疎通もできず四肢も動かせない患者は相当な数に上る。経管栄養が困難になると点滴で可能な限り維持し、できなくなるとそのまま看取る。延命治療をしない場合は経管栄養をせずに点滴に移行し同様に最後を看取る。
胃瘻は1979年米国で開発され、当初生後4カ月〜18歳の脳性マヒや食道に障害をもつ子供達が対象だった。老人に転用されたのは日本だけ。東大大学院人文社会系研究科、会田薫子氏(医療倫理学)は、欧米の先行研究では「進行した認知症患者に経管栄養法は適応でない。患者の利益より負担が大きく施行すべきでない」との結論が出ている、と指摘する。
人間の生命とは自然に生きられる限りの人生であって自然な寿命を終えてなお人工的に生かされる生命ではない。自分が生きているかどうかもわからず、生かされている事も感じとれぬ状態でもっと生きたいと思うほどの欲はないのが老人というものだ。晩年まで精一杯人生を生き抜いてきた老人が、死への恐怖心は多少あっても、意思の疎通もできず生きている感覚も持てない状態になってまでなお生に執着することはほとんどないだろう。

 

医師 沢田 實