春日部セントノア病院

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2012年4月

『ICD−10』
 当院に就任して6年目を迎えました。20年ぶりに臨床に復帰したら、精神医療を取り巻く環境は大きく変わっていました。精神疾患の診断が国際疾病分類(ICD−10)によって診療が行われていたからです。国際疾病分類は疾病や死亡のデータを世界的に統一した疾病名で比較・分析して、医学や健康の推進を図る目的でWHOが1960年代から取り組み、10回の修正を経て1993年から使われました。我が国では1995年からICD−10が導入され、保健所では死因分類が新しい分類に変わりましたが、国際的に統一された事を嬉しく思いました。しかし精神医学でのICD−10の診断に、私は戸惑いと違和感を覚えました。ICD−10が20年前に決まった為、その後の医学の進歩についていっていない事もあるからです。最近注目されているレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症や特発性正常圧水頭症は分類されていませんので、次の改訂のICD−11には入ってくるのでしょう。またアルツハイマー型認知症は精神障害第5章(F)に分類されていますが、アルツハイマー病は神経系の疾患(G)に分類されています。しかし私が違和感を覚えたのは、その診断が「症状が〜週間持続している」「症状が〜月以上経過していない」など客観的症状の有無と持続時間などが条件となっており、身体疾患と同じになっていた事です。これまでの精神医学では疾病概念があり、症状学・病因論・解剖学的にも議論され、患者の過去の生活全体を考慮して病気を把握して診断・治療を行っていました。ICD−10の導入時の議論に参加していないので知りませんでしたが、精神病理学の研究者や精神療法家の中には今でもICD−10を批判している専門家がいます。確かに医学診断の国際統一を図ろうとするとこのような分類になるのは当然ですし、共通の診断名で国際的共同研究や治療ガイドラインの作成・治療効果の判定は容易になっています。
 私もICD−10を5年間使用して大分馴染んできたし、当初の違和感も薄れてきました。それでもなお私の臨床はICD−10を使用しつつも当分軸足を旧来の精神医学に置こうと思っています。

 

医師 佐々木 昭子