春日部セントノア病院

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2012年5月

『がんのホスピスに学ぶ』
 前にも書きましたが、2010年の英国緩和ケア学会では、高齢化する成熟社会の課題を「認知症」とし、今後の主な研究対象を「認知症の緩和ケア」に当てるとしました。これは、これからのホスピスケア(緩和ケア)の主な対象が認知症にあることを示唆しています。
 過去にがんのホスピスに従事した経験から、そこで私が学んだことを簡単に記してみます。
 認知症のホスピスケアの原則はがんの場合と変わりなく、@「人間の尊厳性を大切にする A苦痛などの症状をコントロールする BQOL(生活の質)を大切にする が挙げられます。
 私が注目する点は、がんのホスピスケアでは患者さんだけでなく家族へのケアを重視し、患者さんに対するのと同じくらい家族のケアも大切にするという点です。がんのホスピスに来る家族は、患者さんと同じくらいに、がんという病気に対して切実な思いで向き合っています。それ故、患者さんが亡くなった時には、家族にとって大きな喪失感や悲嘆をきたします。遺族が悲しみを上手に乗り越えていく手助けをすることがホスピスケアの基本の一つです。
 具体例を挙げてみます。がんのホスピスでは、患者さんの死亡後でも半年毎に家族に手紙を書いたり、年一回家族会を開いたりしてそのケアをしています。また、患者さんが亡くなると必ず「お別れ会」という短時間の集いを病室で開きます。死後処置を終えてから、スタッフと家族がご遺体を前にして集まり、思うところを数分ずつ語り合うというものです。全員が涙にくれることもあります。悲しみ泣くということは別れの悲嘆を軽減するといわれ、グリーフケア(グリーフとは悲嘆の意)の一環としてお別れ会が持たれているのです。
 当院での「家族が大切」という言葉のニュアンスはこれと少し違います。キーパーソンとして患者さんの保護者的な役割を担って頂くというものです。
 認知症患者さんの家族の場合も、入院前に経験した患者さんの不隠や、暴言、暴力などが強ければ強いほど、その期間が長ければ長いほど、家族は強いストレスを受け、それがトラウマとなって残っています。それを思い出すと、容易には患者さんの受け入れ(外泊など)が出来ないという家族も時折見かけます。
 「この病院に入院する前は(患者さんに)怒鳴られてばかりだったのに、大変穏やかになり私に笑顔を見せてくれます。それだけでも感謝です」と嬉しそうにおっしゃる家族にお会いすると、「家族も共にケアする」というがんのホスピスの基本を思い起こします。

 

副院長 野 正孝