春日部セントノア病院

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2012年10月

『オレンジプラン』
厚生労働省は先月五日、「認知症施策推進五か年計画」(オレンジプラン)を発表しました。これは、年々増え続けている介護の必要な認知症患者がここ十年で倍増、当初の予想より大幅に増え、今年は三〇五万人に、そして十三年後の二〇二五年には四七〇万人になるというもので、あわててその対策を五か年計画にまとめたものです。
いかにも泥縄式の感は免れませんが、その内容は、『認知症になっても地域で生活できるよう地域で支える体制を強化する』というものです。具体的には、地域のかかりつけ医や認知症の早期診断を行う医療機関の充実、家庭訪問をして家族の支援を行うチーム、介護サービスの施設の充実、認知症患者の日常生活やその家族を支援する「認知症サポーター」を今の三五〇万人から五年間で六〇〇万人に増やし、医療・介護サービスを担う人材育成に力を入れるというものです。
どれもこれも至極ごもっともな施策ですが、いかにも机上の案という気がしてなりません。超高齢化社会の中の核家族化、その中で発症する認知症症状の実態、認知症患者のサポートさえまともに出来ない介護施設、そんな施設さえ増やそうとしない自治体…。
現在、認知症で精神科病院に入院している患者さんは約五万人。しかし厚労省は今後の介護サービスの整備拡充で、認知症患者の精神科病院への入院は増えない、いや増やさないとしています。なぜなら今度の指針では、認知症の入院治療は短期入院とし、新規入院患者のうち50%の患者を二か月で退院させる事を目標としているからです。
セントノア病院は、認知症の入院治療を断られ、入院できたとしても拘束をされ、挙げ句にすぐに退院を迫られ、毎日病院や施設探しに奔走する医療難民となった患者さんやご家族のために立ち上げた病院です。
これらの経験から「拘束をしない」「無理な延命はしない」「入院期間を設けない」を柱として認知症と様々な身体合併症の治療を行い、患者さんとそのご家族を支えることを理念としています。
当院でも、認知症状の改善や合併症の改善で特養や介護施設に転院する患者さんも増えてはいますが、ご自宅に戻れる患者さんはごく稀です。病院の入院期間を二か月に限定するなら、社会福祉施設や介護施設をもっと充実させ、医療難民など出さないようにすることが前提のはずです。医療費削減というこの国の経済的理由での短期入院は患者さんやその家族に多大な負担をかけます。オレンジプランの基となった認知症の増加と、超高齢化社会で持続可能な社会保障を可能にするにはどうすればいいのか。なかなか答えの見つからない医療制度の中では、地道に患者さんに向き合っていくしかなさそうです。

 

医師 佐々木 昭子