春日部 総合
セントノア病院
トップ
取り組み
施設案内
スタッフ紹介
病院新聞
イベント
入院案内
職員募集
病院の沿革

病院短信

一覧に戻る
2017/8/1
病院短信

『認知症と向き合って』


認知症の方を診察するようになり四十年以上が経ちます。ごく珍しい疾患と捉えられていた認知症が今では国民病の一つに数えられるようになりました。国家プロジェクトで対応策が叫ばれているので、世間にも認知症に関する知識は行き渡ってきたように感じますが(小学生の認知症サポーターもいらっしゃるそうです)、それでもご本人やそのご家族のご苦労は、言葉では言い尽くせないと感じています。

認知症の患者さんの中には、「幻覚」「妄想」「徘徊」といった症状がみられる方がいます。幻覚の症状は「誰かがいる、蛇がいる、虫がいる。」と怖がったり、「お客さんが来ているから接待しなくては…。」と食事もとらなかったりします。また、物盗られ妄想は「大事な物を盗まれた。」と身近な介護者を犯人にしたり、隣近所に押しかけて行ったりして、警察が介入する騒ぎとなることも少なくありません。徘徊においては、ご本人が近所の友人宅へ行くつもりで途中でわからなくなってしまい、どんどん遠いところまで歩いてしまうケースもあります。(夏は熱中症、冬は凍死の危険性があります。)このような周辺症状が出始めると、ご家族の危機感も高まり、受診を早めにされるようですが、それでもやはり耐えてしまう方もいらっしゃるようです。

また、患者さんご本人が認知症を認めないことも多々あります。「頻回に忘れるようにはなったが本人は加齢のせいと言うし、教えたところで『そんなことはない!』と事実をねじ曲げて主張する。でも、出来る部分もあるし、もともと他人の意見を聞かない人だからそのせいなのかな…」と、なかなかご家族の方にとっては、受診をさせる踏ん切りがつかないことも多いです。

さらに、認知症と診断はされても、ご家族が「納得できない」「治るのでは…」と病院を転々とするケースや、「認知症は治らない進行性の病気です」と言われ、困惑して呆然としてしまうことも良くあります。

介護で心身ともに疲れてしまうと、家族の方が「うつ状態」となって体調が悪く(不眠・食思不振・意欲低下など)なったりします。また、「自分だけがこんなに苦労している」とふさぎこんだり、「良くならないのは介護の方法がいけないからだ」と自分を責めたりすることもあります。極端な場合は、介護によるイライラから、暴力・殺人・無理心中に至ることまで…。多くは認知症への理解が不十分なことから起こりますが、一人で背負い込み、頑張りすぎてしまうことが原因です。

「恥ずかしい」「あんなに立派だった人がこんな姿になって…」という気持ちが「隠す」「発見を遅らせる」「対応が後手に回る」→「さらに対応が難しくなる」という悪循環を作っていくのです。やはり、受診が早いに越したことはありません。

最近は研究開発も急速に進んでおり、認知症の治療薬が出てくるのではないかと期待している一方、「認知症になっても暮らしやすい世の中を目指していこう」というのが目標となってきています。私達医療者も、その目標に向かって日々励んでいこうと思います。

精神保健指定医  山 美登利