セントノア病院

  • 2017年9月1日 『終末期医療2』

    終末期医療については、医師をはじめ医療関係者の間でもいろいろな意見があることは前号でも述べました。そんな終末期医療。実に不思議なのですが、最も高い関心を持っているのが医療関係者ではなく厚労省だったなんて言ったら皆さんは信じるでしょうか。こんな話、ジョークにもなりませんよね。

    近年、際限なく膨れ上がっていく国民医療費。その一翼を担っているのが終末期医療だと言われていますから、厚労省も無関心ではいられません。それに大命題となっている国民医療費の削減からすれば、病院での終末期の医療費はかなり頭の痛い問題のはずですから…。

    それでも泣く子も黙る厚労省でさえ、終末期医療にはなかなか手を出すことが出来ません。ここでも前号で書きました『生命の尊厳』が顔を出すからです。日本人は本当にこの言葉に弱いんですね。

    という事で、遅ればせながら厚労省も、今秋から自治体や病院などと患者の意思を共有する仕組み作りに乗り出すそうです。つまり自宅で最期を迎えたい?と考える「終末期の患者の意思に沿った医療を提供」するために、「延命治療を望むかどうか」などという情報を救急医や在宅医らの間で共有する方法などを検討するという事らしいのです。

    これは厚労省の2015年度の統計ですが、自宅で死亡した人の割合は12.7%だったのに対し病院は74.6%だったとか。この数字が示すように、確かに病院での終末期医療は、超高齢化社会に突入して以来、厚労省の目の上のたん瘤なのは良く分かります。しかし、病院で亡くなるにはそれなりの理由がある筈です。以下は私見ですが、

    昭和から平成へ近代国家を目指したこの国は、現在、好むと好まざるとに拘わらず超高齢化と同時に核家族化もどんどん進んでいます。と同時に大都会一極集中型の人口形成になり、これがこの国の社会現象ともなっています。そんな時代での在宅医療や在宅での看取り。これを強力に推進している厚労省。私は在宅の医療や在宅での看取りが1〜2日で終わるならまだしも、これが数週間、数か月、数年にわたった場合のご家族の疲労や心労は計り知れないものだと十分承知しています。特に認知症患者においてはなおさらです。厚労省が進める在宅での医療と看取り。私にはどうにも無理に思えてなりません。とはいえ、医療において、しかも終末期においては、延命治療の在り方など患者や家族の意思がより尊重されるべき、という厚労省の考え方には賛成します。

    もっとも厚労省の本音は、病院で行われている終末期医療には、患者本人や家族の意思に必ずしも沿わない医療が行われている実態がある。これが医療費を押し上げている一因でもある。だから…というのが本当らしいのです。

    いずれにしても終末期医療の在り方については、患者や家族が医師らと十分話し合い、納得したうえで本人が決めることが重要なことは言うまでもありません。

    もちろんそんな患者の相談に、適切に対応できる医師や看護師の養成も大事ですけど…。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年8月1日 『終末期医療』

    「スパゲッティ症候群」。この言葉、ご存じでしょうか。病院や医療関係者の間でこの言葉が囁かれるようになったのはもうかなり前になります。

    人生の最後を迎える時、その時に行われる医療を終末期医療と言います。(最近では厚労省が別の呼び方を推奨しています)が、この終末期医療、厚労省の言う通りで相変わらず「医学中心」から抜け切れていないのが現実のようです。

    まず終末期医療を考えるうえで、真っ先に出てくる言葉が『生命の尊厳』です。どこかの首相が「人の命は地球よりも重い」と言ったことがありますが、これを言われたとたんに日本人は反論ができません。この『生命の尊厳』によって、1分1秒でも長生きさせる風潮が医療界にはびこり、延命治療は「行って当然」というのが未だに主流なのです。そして担当医師がその医療が不要になったと思っても「反論できない命の尊厳」のために医療行為を終了できない…。結果、最終段階まで様々な管につながれて死んでいく。これが「スパゲッティ症候群」の実態なのです。

    治療、救命が最上の価値と教育される日本の医学界。医師の内には人工的な延命措置をやめることは患者の命を縮めてしまう、という心理的抵抗がかなりあるのだそうです。それにもう一つ、この症候群を後押しした事由があります。それは「治療を尽くさないと外聞が悪い」と考えてしまう家族の意識です。

    さて実際に終末期として行われる医療にはどんなものがあるのでしょう。典型的なものは点滴注射による水分や栄養分の補給だと言われています。でも終末期の点滴は血管が見つからず、針を何度も刺され青黒く変色した腕や足は見ただけで痛そうです。医学的にも余分な輸液は気道内の分泌物を増やし、たんの吸引による苦痛はもちろん気道が閉塞するリスクも高く、肺や心臓への負担も大きいといいます。点滴は見た目以上に本人に与える苦痛は大きいと思われるのです。それなのに点滴はなくなりません。ある調査によれば「終末期の患者にとって医学的に必要」と答えた医師は4割にも満たなかったとか。それなのになぜ…。

    二つの病院の運営に携わる私がこんなことを言うのも変な話ですが、どうも終末期医療になると医師や看護師の医療スタッフ、そしてご家族の「治療を尽くさなければ」という双方の心理的負担が大きくなり、何もせず看取るのは看取る側としては心が痛むので、せめて「点滴ぐらいは」となるのだそうです。

    当院も『延命治療は行わない』ことを明言しています。でもご家族同様、医療スタッフも心の葛藤は避けることが出来ません。

    『延命治療は行わない』当院の理念は、終末期に必要な医療として「技術的に可能なことをやりつくす」のではなく、患者さんが穏やかに、そして安らかに最後の時を迎えられるよう、看護や介護を手厚く行うこと。そして最後までその人らしく人生を終える。そのことに医療スタッフとして手助けすること。これこそが本当の『生命の尊厳』だと思うからなのです。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年7月1日 『スマートドラッグ』

    私(昭和18年生まれ)がいたずら盛りの子供の頃、いたずらや悪さをして近所のおばさんやおじさんに叱られたとき、最後に言われたのがこの言葉でした。『やっちゃいけないって何度言ったら分かるの!まったく!馬鹿につける薬はないのかね!』。

    いいえ、今はあるんです。馬鹿につける薬が…。

    そんな薬が『スマートドラッグ』、いわゆる『スマドラ』です。1990年代に「頭がよくなる」「記憶力が向上する」などと本の中で紹介され、その後、米国で爆発的に流行した薬です。

    もちろんこういう事にはとても慎重な日本ですから、その「有効性」や「安全性」が確認されていないとして未だに承認しておりませんし、日本では製造もされていません。

    ところがこの『スマドラ』が今、中高生の間で密かに流行、蔓延しているというのですから驚きです。

    集中力を高め、なお且つ思考力や記憶力を高め、しかも中高生でも安易に買える値段(個人輸入)となれば、それこそ一石三鳥どころか四鳥ですから、日々勉強に追われる中高生には、神様の贈り物にも思えるのかもしれません。

    この『スマドラ』、脳の機能に作用し、思考力や記憶力にもかかわるアセチルコリンを増大させる効力があるそうで、「てんかん」や「認知症」の治療薬にも使われているそうです。

    つまり、他の病気に使用されている薬の一部分の効力を利用しているとも言えるのです。

    そんな『スマドラ』の規制にやっと厚労省が乗り出しました。先月22日に開かれた同省の部会で、健康被害や乱用に繋がる恐れのある医薬品が個人輸入され、出回っている可能性があるとの報告を受け、危険性の高い薬の個人輸入を原則禁止するということを確認したというのです。

    『スマドラ』の国内に出回っている種類や健康被害の実態は、正確にはまだ分かっていないそうですが、健康な若者らが勉強や仕事の効率を上げたい、と本来の目的からは外れて使うケースがある、と問題視されたわけです。この日の部会で同省は輸入されている薬をインターネットなどで調べ、医学界や同団体から意見を聞くと説明、健康被害や依存症につながる恐れがある場合には医師の処方箋や指示がなければ個人輸入を認めないという方針を示しました。

    どんな薬であれ副作用のない薬は一つもないのが医療界の常識ですが、この『スマドラ』の副作用については、使用した一部の高校生から「集中力や思考力が高まる」や「眠気が来ない」との意見もある一方で「薬が切れるとイライラする」などの、まるで覚せい剤使用者みたいな感想も聞かれるといいますから本当に怖いです。

    若者よ、勉強や仕事の効率を上げるために安易な方法を取ってはいけません。勉強をすること、仕事をすることに人生の意義があるのですから。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年6月1日 『医療とマイナンバー』

    日本に住むすべての人に12桁の番号をふり、社会保障や税金、医療などに関する国と自治体のサービス向上に生かそうと始まった『マイナンバー』制度。この制度が始まって早や一年半にもなります。

    が、その後、ほとんど音沙汰がありません。私が知る限りですが、この制度(マイナンバー)が使用されているといった話は一度も聞いたことがありません。いったいどうなっているのでしょう。

    そもそもこのマイナンバー制度、本を正せば「医療の無駄を省き、患者さんの利便性を高め、大災害などの非常時に病院や診療所が困らないようにする社会基盤として設計されたもの」なのだそうです。

    6年前の東日本大震災では、津波で多くの病院や診療所が被害にあいました。その被害で患者さんの診療録や処方箋が紛失し、その後の適切な医療が受けられなかった高齢患者が多くいたそうです。

    そんな災害時でもこのマイナンバー制度があれば、その番号から電子カルテが検索(日本中の病院・診療所が電子カルテを採用する必要がありますが)でき、過去の診療実績や使用薬剤などもすぐに知ることができます。医師や看護師もそのカルテをもとに遅滞なく対処ができ、さらにレセプト(診療報酬明細書)との情報を繋げば、病院や診療所ごとの医療費の動向までもが掴みやすくなります。また、いま流行(はやり)の匿名のビックデータを活用すれば、国民への医療提供が標準化され、しかも効率化され、医療の無駄が省ける…はずなのです。

    確かにセキュリティの問題はあります。医療情報の取り扱いは慎重であるべきですし、マイナンバーと繋ぐとなればそれなりの堅固なセキュリティが必要だという事は十分承知しています。

    しかしです。施行後一年半が過ぎるというのに、未だに肝心のカードの普及がままならないなんて開いた口が塞がりません。そもそも政府では初年度に3000万枚を配る予定だったのだそうです。でも未だに1300万枚しか配れてないんですって。そんな不手際の原因は、どうやら発行元である「情報システム機構」の大規模なシステム障害にあるらしいのです。一時、新聞にも載りましたから皆さんも覚えていますよね。「情報システム機構」。あまり聞きなれない組織名ですが、役員は相変わらず大部分が旧自治省の出身者で構成されており、職員もいわゆる役所仕事に慣れた人々の集まり(決して誉め言葉ではありませんよ)なのだそうです。で、大規模障害やその後の対応に問題があったとしても誰も驚かないし、ほとんどの国民も無関心。これって良い事なのか悪い事なのか。

    でもね。医療に関していえば、医療の無駄を省く効率化には絶対に必要な制度だと思いますよ。いずれは社保や国保以外にも沢山ある健康保険の統一化を図り、不公平感を払拭する為にも大いに役立つはずですから。

    いずれにしてもこの『マイナンバー』制度。日の目を見るのはいつになるのでしょう。やっぱり「ほんにこの世は儘ならぬ」ですかね。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年5月1日 『終末期医療』

    一般的に『終末期医療』と言えば、治る見込みがなく数週間から数か月で「最後の刻(とき)」を迎える患者に対し、延命を目的とした医療を行うことを言います。

    あるアンケート調査によればこの終末期、6割の人が家で迎えたいと願っているそうですが、現実には8割の人が終末期を病院で迎えているのだそうです。そして病院であれば死を迎えるまで治療は続けられるのが普通です。

    これも、ある大学の研究機関のレセプト(診療報酬明細書)集計調査ですが、65歳以上の終末期3か月間の医療費はすでに1兆2000億円を超えている、という報告が出されています。当然、医療費削減に躍起になっている厚労省が黙って見過ごす訳がありません。在宅医療を促進したり入院期間を短縮したりの他に、終末期医療にも手を打ってきています。が、一方で、「高額医療費の大半が終末期の患者で高齢者というのは全くの誤解で削減効果もない」という意見や、「1兆2000億は国民医療費の3.5%で、この中には急性疾患の患者も含まれており、社会保障財政の圧迫にはなっていない」という意見もあります。

    そもそも『終末期医療』とは何なのか。そして『延命治療』とは何を指すのか…。

    当院は、川越・春日部の両病院とも開設当初から「延命を目的とした内科的治療はしない」ということを明言してきました。そしてその理念は十数年経た現在でも変わりはありません。しかしその是非を問われると、とても難しい論争に発展してしまいます。そもそも『終末期医療』には「本人が望む最後を迎えさせたい」という論理面と過剰な延命治療を減らすという財政面の二つがあります。しかも論理面には『肉親の情』という割り切れない問題が絡みますのでなかなか結論は出せないのが現状だろうと思います。

    何年か前に、今の副総理の麻生さんが「いい加減に死にたいと思っても生かされたらかなわない。政府の金でやってもらっていると思うとますます寝覚めが悪い」とやってヒンシュクを買いましたが、実のところこれが「本音」だという意見も多かったように思いますがどうでしょう。

    昔、老人病院のベッドに寝かされている高齢の患者を診ていた医者が、「まるで魚河岸に並んでいるマグロのようだ」と評した言葉が忘れられず、高齢者医療にことごとく反発し今のセントノア病院を創立した私には、麻生さんの本音は、建前論ばかりが優先する国会論争の中で、とても新鮮に聞こえたのは事実です。

    ともかく、当院に入院している患者さんには『人としての終末期を穏やかに過ごす』ことのお手伝いをさせてもらうこと。これが当院の願いです。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年4月1日 『ストレスチェック』

    以前にも少し触れましたが、ここ数年、世界先進国の医学界の潮流は精神医学がトレンドになっています。日本の厚労省もそれに倣ったわけでもないのでしょうが、今から2年前、従業員50人以上の事業所に対して年1回、従業員がストレスに関する質問票に回答する「ストレスチェック」を行うよう義務付けました。昭和から平成へ。バブルの崩壊と共に、ただガムシャラに働くだけの風潮はとっくの昔に無くなったはずなのに、それでも2015年に厚労省が実施した「労働安全衛生調査」によれば、現在の仕事や職業生活に関して「強いストレスとなっていると感じることがある」とする人は55%もいたとか…。その内容たるや「仕事の量・質」が最多の57%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が36%、「仕事の失敗、責任の発生など」が33%だったそうです。

    いやはや、昭和時代の最後の企業戦士を自認する我々には、考えられないくらいの軟弱さかな…と。ちょっと驚いています。おっと我々ではなく、あくまで私個人の感想ですけどね。

    ともあれ、私たちのこの病院では、『真に患者さんに必要なだけの医療を行う』。つまり医療のための医療は行わない。そしてもうひとつ、この病院で働く『職員たちのための病院を』。やりがいのある、明るく、楽しい職場にする、が理念の一つなんです。ブラック企業など全く縁がない、と自負していますが、厚労省の「労働安全衛生調査」のデータも無視できませんしね。

    そこで、下記にちょっとしたアドバイスを。

    今日から4月です。入学や就職、転勤等で新たな環境での第一歩を踏み出す人も多いと思います。さすがにそんな新しい環境では、確かにストレスはかかりやすいものなのでしょうね。そこでストレスケアの一つとして次の項目をあげてみます。もちろんこれは精神科指定医の受け売りですけど…。



    S スポーツ ラジオ体操やウォーキング。1日15分でも体を動かす。

    T トラベル 旅行。又は自然と親しむ。

    R レスト レクリエーション。休息。家族との団らん。

    E イーティング 家族や親しい仲間と食卓を囲む。

    S スピーキング&シンギング 話す。カラオケで歌う。

    S スマイル&スリーピング 笑顔。快眠。


    と、まぁこんな具合ですけど、この中の2つや3つなら、どなたでも出来そうですよね。ただ、これからの問題として、体調の不良を全てストレスのせいにするのは、とても危険だということも知っておいて下さい。もちろんこれも受け売りですけど、体の病気で症状が出る場合も大いにあるそうですから…。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年3月1日 『たばこ白書』

    厚労省は昨年の10月、15年ぶりに『たばこ白書』を公表。

    肺がんや虚血性心疾患、脳卒中などと受動喫煙との因果関係を確実」と位置づけました。そして翌10月、飲食店を含む建物内の原則禁煙と喫煙室の設置を認める法整備のたたき台を発表したのです。

    WHO(世界保健機構)から「世界最低レベル」と指摘される日本の受動喫煙対策。因果関係を「確実」とした厚労省のお墨付きをもらって、勢いづいたのが2020年東京五輪の受動喫煙の強化を進める政府と与党・野党を超えた規制派議員。主なメンバーは塩崎厚労大臣や規制派を代表する河野太郎さんなどなど…。この河野太郎さん、先日の自民党厚生労働部会で、集まった約50人の議員さんたちを前にこうぶち上げたそうな。「たばこを吸う人間が横に座った人間のことをどれだけ考えてこなかったか。受動喫煙を一掃してほしい」と。

    これに猛反発したのが分煙派の面々。石破茂さんを筆頭に、野田毅さん、片山さつきさんなどなど…。石破さん「みんな止めちゃえと言うのは知恵のある人のいう事ではない」。野田毅さん「愛煙家、嫌煙家双方の権利を守ることが大切」。

    自民党だけではありませんよ。民進党の元総理、野田佳彦さん「(たばこ増税は)税制を通じたオヤジ狩りみたいなものだ」。

    そういえばこの国の歴代首相にはけっこう愛煙家が多かったようです。まず「岸信介」、そして「田中角栄」、「竹下登」、「橋本龍太郎」。さらに前述の「野田佳彦」等々。(敬称略)

    結局、自民党厚生労働部会は、質疑の終盤に発言した重鎮、野田毅さんの「厚労省が出した飲食店を含む建物内の原則禁煙のたたき台は大幅に修正される前提だ。厚労省が言ったからといって通る自民党じゃない」の一言でチョン。さて施政方針演説で規制強化を訴えた安倍さん。どうします?

    ともあれ、2010年にWHOとIOC(国際オリンピック委員会)が『たばこのない五輪』の推進で合意。2010年のバンクーバー冬季五輪(カナダ)以降の五輪開催地は、全て罰則付きで飲食店の建物内完全禁煙の規制を実現。現在は世界49か国で、飲食店を含む公共の場を全面禁煙にしています。

    さて、病院はどうでしょう。現在は敷地内全面禁煙と建物内全面禁煙とに分かれています。大学病院などの急性期病院は前者です。当院は建物内全面禁煙ですが、敷地の片隅にブロック塀で囲った喫煙所があります。つまり分煙です。もっともこれも五輪前には敷地内全面禁煙になっていると思いますが…。

    私ですか?二年前に心筋梗塞を患い、血管にステントを挿入する手術を受けて以来、たばこは止めました。今では喫煙場所をあちこち探したり、受動喫煙で肩身の狭い思いをせずに済みますし、何より両病院の先生たちに禁煙しろと言われなくなりましたからね。

     

      常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年2月1日 『さくら』

    犬と人間の歴史はかなり古いそうで、一説によれば15000年位前まで遡るそうです。その昔、犬は人間の食べ残した動物の肉や骨を食べているうちに、移動する人間たちについていくようになり、やがて行動も共にするようになった、と言われています。

    一方で人間も、たとえ暗闇の中でもその鋭い嗅覚で、接近する他の獣をいち早く察知し、吠えたてる警戒心は大いに役に立ち、共存の道を歩むようになった、というのが通説のようです。この人間と犬の長い長い歴史が、犬が人間の最高の友と言われる所以なのかもしれませんね。

    そんな犬と人間の関係。ワンちゃんはマブダチ、いやファミリーだ!そう思っている人も多いと思いますが、実はワンちゃんも人間の感情をちゃんと理解しているのだ、と科学的に示された研究結果があるのはご存知ですか。

    イエール大学やハンガリー科学アカデミーの研究です。

    それによると、犬と人間には「三つの共通点」があるのだそうです。仲良しには理由があった!という事でしょうか。

    まず一つ目   喜びや悲しみを人間と共有している

    悲しい気持ちでいるときに、犬が傍に寄り添ってくれる。これは本当に私たちを励ましてくれていると考えてよいのではないか。

    そして二つ目  人間をちゃんと信頼している

    犬は恐怖を感じると飼い主に助けを求める習性がある。これは他の動物には見られない。犬にいろいろな人の臭いをかがせたところ、脳の喜びを司る部分は、飼い主の臭いに最も強く反応し活性化した。

    さらに三つ目  人間の脳は犬を家族だと認識している

    被験者の女性に「愛犬の写真」と「自分の子供の写真」を見せたところ、どちらの写真にも脳の同じ部分が活性化。つまり人間の脳は犬も人間の子供も大切な家族の一員として同じように認識しているというわけ。

    さて、当院(春日部セントノア)のセラピー犬『さくら』が、一月十五日、静かに息を引き取りました。十歳と五か月の生涯でした。犬の寿命は意外と短くて、さくらのような大型犬は十歳前後なのだそうです。という事は、さくらも自分の寿命は全うしたことになります。

    さくらにまつわるエピソードは幾つかありますが、その一つを披露します。『さくら』は病院に来る人たちを分別していたようなのです。まず職員には制服であろうと私服であろうと絶対に吠えませんでした。もちろん患者さんにも絶対吠えたりしません。驚いたのはお見舞いに来るご家族には吠えないのに営業や納品に来る業者さんには警戒を見せ吠えるのです。どこでそんな区別ができるのか、一時、院内で話題になったほどです。ともかくとても利口な犬でした。

    『さくら』、私たちの気持ちを穏やかにし、時に癒してくれたことを本当に感謝します。ありがとう。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋

  • 2017年1月1日 『経済的貧困と心の貧困』

    「正月は 冥土の旅の一里塚 目出度くもあり 目出度くもなし」

    誰の句か忘れましたが、いい年だったのか悪い年だったのか判断のつかない、激動と言ってもいい一年が終わりました。

    昨年は英国がEUを離脱したり、トランプさんが大統領選で勝っちゃったり。そしてこの国では安倍さんの一人パフォーマンスがやたらと目立った年でもありました。例えばトランプさんが勝つとすかさずニューヨークまで飛んで行ったり、プーチンさんと地元の山口で会談したり…。さすが安倍さんって訳でもないのでしょうが、相変わらず安倍さんの支持率が高かったですね。

    それはそうと安倍さんの最大の目玉である『アベノミクス』はどうなったのでしょうね。

    『アベノミクスは道半ばですが、全て順調です』と言われ続けて何年か経ちましたが、昨年もやっぱりその実感はないという人たちで溢れていましたよ。まあ多少の実態はあったのかもしれませんが、安倍さんや政府がいうほど国民生活に変化がなく、ほとんどの国民にその実感が湧かないとすれば、アベノミクスは失敗だったのではないか、と結論付けられても仕方がないのではないですか。

    それどころか私たちにとって問題なのは、私たちの生活に大きな負担がかかる法律がどんどん通ってしまった年になったことなのです。

    まず、年金の支給時期が遅らされ、金額は引き下げられました。医療費は引き上げられ、高齢者の負担がさらに増えました。巷では相変わらず保育所不足に保育士不足。介護離職は増え続け、産休明けや育休明けでの職場復帰もままならない。こんな社会でこんな政策では、実感が湧かないのは当たり前だと思いますよ。それに一方では公務員給与が引き上げられました。この国の企業の九十%以上を占めている中小企業では、汗水流して働く労働者が、給与が上がるどころか雇用不安にさえ悩ませられているというのに…。

    結局のところ多少の増収が見込めたとしても、将来の不安は当然ながら払拭されません。だから無駄な消費はせず貯蓄に回るのです。つまり安倍さんが何を言おうと、この国の人々はこの悪循環から絶対に抜け出すことはできないのです。

    そして格差社会問題。米国では格差社会が問題になっていますが、この国だって負けてはいません。

    つい最近まで、この国では東日本大震災や熊本の大地震にみられるように、困っている人たちに手を差し伸べる、この国の美徳ともいえる助け合いの精神が根付いていました。しかし今では、大震災で避難している子供たちをいじめたり、ゆすったり。子供たちを諫める立場の教師さえ「菌」だなんてあだ名をつける。何かが狂っているとしか思えません。

    景気の上向きを狙うのも結構だけど、ここ数年で失ったものを取り戻すほうがこの社会にはずっと大事だと思います。そうでないと『経済的な貧困』だけでなく『心の貧困』まで生み出してしまう結果となります。

    「安倍政治」が生み出しつつある利己的な「何か」がこれ以上拡大しない年であることを切に願っています。

     

     常務理事・事務局長 瓦井 洋